緊張・不安・精神性の汗を止める薬デパス

汗は汗でも気温や暑さに関係なく、人から注目を浴びたり、人前に立った時など、強いプレッシャーを感じる場面で大量に出る汗があります。

症状は人それぞれで頭や顔、手や足などを中心に局所的に大量の発汗を伴う人もいれば、全身から大量の汗が出る方もいます。

この汗は通常の汗とは少し異なり、緊張や不安などの何らかのストレスが起因となり出る汗で、いわゆる「精神性発汗(せいしんせいはっかん)」である場合がほとんどです。

精神性発汗とは
緊張やプレッシャーなど精神的なストレスを感じたときに出る汗です。あがり症の方などに特に見られる汗で人前に出たり、人の視線を集めるような場面で緊張・不安を感じ、交感神経が活発化することで流れます。恐怖に対する生理的な反応とも言え、手足、脇、顔、背中など局所的、または併発的に全身に汗が出る方も多いです。
引用:汗の種類と性質「精神性発汗」

この汗は制汗剤でもある程度の抑制は可能ですが、汗の元を止めなければ止まりにくい症状でもあります。この精神性発汗には「緊張や不安を抑える薬」でもある「デパス」が有効な場合があります。

デパスとは?

デパスは、国内で最も使用されている抗不安薬(精神安定剤)で日本の田辺三菱製薬(現:吉富製薬)で開発された国産の薬です。様々な症状への適用が認められている使用用途の幅の広い薬です。多汗症・汗への効果をわかりやすく例えると・・・

弱火
汗を止める薬一覧」でも紹介していますが、デパスの効果は火を弱くするようなもので外からの刺激を和らげ発汗を抑制する薬です。汗そのものを抑制するわけではありませんが、緊張や不安感を和らげ、精神性発汗を抑える効果が期待できます。

それでは、デパスについて詳しく解説していきます。
詳しい情報を自身で確かめたい方は「おくすり110番」などを参考にすると良いでしょう。

デパスのメカニズムと効果

デパスはエチゾラムを主成分とする内服薬です。

緊張のメカニズムには血中のノルアドレナリン値が関与していると言われており、このノルアドレナリンは緊張や不安を感じた際に活発に分泌され、自律神経の交感神経を活発化させる働きがあります。その結果として血圧が上昇し、心拍・体温が上昇、動悸や発汗といった症状が現れます。緊張型の発汗(精神性発汗)もこの症状の一つにあたります。

エチゾラムは、ベンゾジアゼピン受容体の働きを調整し、交感神経の活動を抑制する働きがあります。そのため、緊張や不安を感じることがなくなり、心身ともにリラックス状態を維持できるようになります。

その他、筋弛緩(筋肉をほぐす)作用も認められており、緊張でガチガチに固まった体をほぐす効果も期待でき、肩の力も抜けてリラックスできるようになります。

このようにリラックス作用を促すことで外部からの刺激(緊張や不安、焦りなど)をシャットアウトできる薬です。プロバンサインのように直接的に汗を抑える効果はありませんが、精神性発汗(精神性多汗症)など心の乱れが起因となって出る汗には抑制効果が期待できる薬です。

デパスの一般的な効果・作用

効き始め 30分〜1時間半
持続時間 4〜6時間
タイプ 内服薬(飲み薬)
作用 抗不安作用
精神性発汗・精神性多汗症を含む、緊張型の汗に効果あり

薬の効き目には個人差があるため、あくまでも目安の数値になります。初めて使用する際はこの辺りを基準に考えて使用してみると良いでしょう。

デパスの副作用と副作用対策

デパスが日本で広く使用される理由には安全性の高さや副作用の少なさがあります。重い副作用はほとんどありませんが、長期間大量に飲み続ける場合や持病のある方は注意が必要です。

依存症

最も警戒すべき副作用は依存症です。

デパスには依存性が見られるため、長期に渡り、量を飲み続けると体が薬に慣れ、薬をやめられなくなってしまう危険性があります。服用を急に中止すれば離脱症状(反復使用を中止することから起こる病的な症状)として強い不安感や不眠、混乱、幻覚などが現れるケースも少なからずあります。

徐々に減薬することで離脱症状は現れませんが常時服用する場合は注意が必要です。

刺激興奮

もともと精神障害がある方は鎮静効果が得られず、かえって興奮してしまうケースがあります。

呼吸抑制

もともと呼吸器系の弱い方は息苦しさを感じたり、頭痛を感じることがあります。

また、デパスは睡眠導入剤にも使われることがあり、その高いリラックス作用により眠気を促す場合もあります。服用中は眠気を感じたり、集中力や注意力が散漫になる可能性があるので高所での作業や危険の伴う作業は避けてください。

対策方法
後ほど汗対策・多汗症対策としての使い方で紹介していますが、汗を抑えたい時間帯にだけ調整して飲む「頓服」での使い方をすることで依存症の心配はまずありません。常時使うのを避け、必要なときにだけ使うようにすると良いでしょう。

また、服用時の眠気を抑えるには夜しっかり睡眠をとることが一番です。その他、こまめに席を立つなど眠気を抑える対策をとると良いでしょう。眠気対策として、コーヒーなどカフェインを取る方法もありますが、鎮静を促すデパスと効果が相反するため、なるべくカフェインなど興奮性の成分の服用は控えた方が薬の効果がしっかり得られるでしょう。

ただし、汗が気になっている方であれば、あまり寝落ちしてしまうほどの睡眠作用は感じないと思いますのでそれほど気にする必要はないと思います。

デパスの禁忌事項(使ってはいけない人)

重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)の方
筋肉の力が弱くなる病気のため、筋弛緩効果のあるデパスは症状を悪化させてしまう怖れがあるため、使用してはいけません。

急性狭隅角緑内障(きゅうせいきょうぐうかくりょくないしょう)の方
リラックス作用を得る副作用として抗コリン作用があります。この抗コリン作用により、眼圧が上昇し、症状を悪化させる怖れがあるため使用は避けてください。

注意が必要なケース

ご高齢の方は副作用が出やすくなる傾向があるため、使用は少量から始めることをおすすめします。

その他、呼吸器系に障害がある方、心臓病、肝臓病、腎臓病、脳に病気のある方は注意して使用するようしてください。

また、どの薬にも言えることですが、アルコールとの併用は作用を強くする可能性があるため、薬服用中の飲酒は控えるようにしましょう。

デパスの汗対策・多汗症対策としての使い方

デパスは抗不安作用以外にも睡眠・筋弛緩・抗うつなど様々な適用があり、幅広い症状に利用されています。ここでは、その中でも緊張・不安時に流れる汗対策・多汗症対策としての使い方を紹介します。

多汗症対策としてデパスを使用する場合は、薬の効果を得たいときにのみ服用する「頓服(とんぷく)」での使い方が基本となります。

頓服とは?
一日に何回と決めず、症状が出た時に服用すること。

上の薬の作用時間や即効性でもお伝えしている通り、デパスは効き目が早く、飲んですぐに効果が得られる短時間型の薬です。

薬の効果を得たいタイミングをみて、都度調整を図りながら服用するようにすると、副作用である依存症などにもなりにくく、安心して使えるでしょう。

使用例
15時から行われる会議の間だけ汗(緊張)を止めたい ⇒ 14時に服用
1日中汗(緊張)を止めたい ⇒ 朝に一錠、薬が切れる1~2時間前にもう一錠
19時から食事デートだから夜に汗(緊張)を止めたい ⇒ 18時に服用

このように効き目が現れるまでの時間や持続時間を逆算して薬の効果が欲しいときにだけ、しっかりと作用が得られるように飲むタイミングを調整してみましょう。

汗対策・多汗症対策としての効果・作用は?

これまでに説明してきた通り、デパスは多汗症の薬ではありません。そのため、本当に汗を止める効果があるのか?と不安に思われる方もいると思います。

デパスはプロバンサインのように汗そのもの(発汗)を止める作用はありませんし、制汗剤のように汗腺を塞ぎ汗を止めるわけでもありません。緊張や不安を感じにくくし、間接的に汗を止める薬です。

そのため、単に汗っかきの人や多汗症の人にはあまり効果は期待できません。緊張や不安が発汗の起因となる精神性発汗(精神性多汗症)の方に適応のある薬と言えるでしょう。

緊張・不安に関係なく汗が出る方はプロバンサインを、手や足・脇・顔など局所的に発汗のある方は制汗剤の使用をおすすめします。「部位別おすすめの薬・制汗剤ランキング」では汗をかいてしまう部位別におすすめの制汗剤を紹介しているので参考にしてみてください。

デパスの購入方法

デパスは薬の取り扱いのある医療機関を受診することで医師・薬剤師の診断のもと、処方箋をもらい購入することができます。

以前は医療機関以外にも海外通販(個人輸入)を利用することで処方箋なしで購入もできましたが、現在は個人輸入に規制がかけられているため、個人での輸入は禁止となっています。そのため、通販での購入は不可能となっています。

デパスには数多くのジェネリックがある

こちらも現在はデパス(正確にはデパスの主成分であるエチゾラム)に輸入規制がかけられているためデパス同様個人輸入で購入することはできませんが情報として紹介しておきます。

以前(2016年10月14日までの)デパスが通販で購入できていた頃はデパスを含め、エチゾラムを主成分とする薬には以下のものが販売されていました。

デパス
(田辺三菱製薬)
エチラーム
(インタス・ファーマ)
デパス(田辺三菱製薬) エチラーム(インタス・ファーマ)
エチゾカーム
(ロイド・ラボラトリーズ)
エチゾラ
(マクレオーズファーマ)
エチゾカーム(ロイド・ラボラトリーズ) エチゾラ(マクレオーズファーマ)
エチゼスト
(コンセーンファーマ)
エチゼスト(コンセーンファーマ)

その他、トーワのエチカーム、フジナガのパルギン、SWのメディピース、日医工のアロファルムなど様々な名称のデパスジェネリックがありましたが、現在はデパスジェネリックは「エチゾラム」という名称に統一する動きがあるようです。

新薬とジェネリックについて
新薬とは先発医薬品とも呼ばれ最初に販売された薬のことを言います。ジェネリック医薬品とは後発医薬品とも呼ばれ、新薬の特許がきれた後に販売される薬のことです。

ジェネリック医薬品として販売するには「有効成分の種類・量」「用法・用量」「効能・効果」が同じでなければいけないため、基本的に新薬もジェネリックも同等の効果が得られます。

例えば、エチラームにはエチラーム舌下錠がありますが、どちらもデパスジェネリックであり、基本的にはどの薬も新薬であるデパス同様の効果が期待できます。舌下錠はジェネリック特有の改良(味や形状ほか、飲みやすさを変えるなど)を加えたお薬になります。

仮に今後医療機関で処方されることがあれば情報として頭に入れておくのも良いかもしれません。(ただし、日本の医療機関は世界的に見てもジェネリックに対して前向きではないですし、認可の下りていない薬であればあまり積極的に処方する医療機関は少ないかもしれません)

病院で購入する場合は精神科や心療内科へ

デパスは、精神科、または心療内科を受診することで取り扱いのある病院であれば処方してもらえます。薬の購入を目的に病院を受診する際は事前に処方可能なのかを確認して出向くことで二度手間を防ぐことができるでしょう。

病院であれば、デパスは保険適用で購入できるはずです。ただし、薬の購入目的で医療機関へ通っても、医師に判断によっては薬を処方してもらえない場合もあります。そういう意味ではデパスはプロバンサインよりも少し入手しづらい薬になってしまっています。

既に規制されてしまっているので、こればかりはどうすることもできません。

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